飲み味が硬いのと軟らかい水の差は、どうして生まれるのでしょうか。
水にはカルシウム・ナトリウム・カリウムなどさまざまなミネラル成分(鉱物質)が溶け込んでいます。
ミネラル分が多く含まれると水の味は硬く感じられ、少ないと軟らかく感じられます。
水の硬さを科学的に算出した数値は「硬度」と呼ばれますが、これらはミネラルの主成分であるカルシウムとマグネシウムの量を測定したものです。

1リットル中100mg以下が軟水、200mg以上が硬水とされ、日本の水の場合はほとんどが100mg以下の軟水です。

さて、一般的に硬い水は口に含むと引き締まった味がします。
冷蔵庫で冷やせば、味のクリスタル感は一層強調され、よりおいしく感じると言われています。
一方、軟らかい水は口の中で優しく広がります。
香りや風味を大切にする日本茶や紅茶などを淹れるときは、軟らかい水が向いているようです。
「水の硬度」に目を向け、暮しの中で使い分ければ、生活が豊かさを増していくことでしょう。

人間の体の60%は水でできています。
新生児だとこの数字はさらに高く、体重の80%が水ということになります。

もう少し詳細に説明しますと、生命の最小単位は細胞です。
細胞はタンパク質、核酸、糖質などの生体高分子と呼ばれるもの、さらに脂質やさまざまなイオンなどが複雑な構造で組合わされていますが、これらの諸要素を結び付けているのが水なのです。
水と言っても形態は変わっており、これは原形質と呼ばれるもので、ドロドロとしたゼリー状をしています。

目に見えないほど小さい細胞の中で、水様分子が絶え間なく休まず動きまわり、生命を支えています。
細胞の種類によっても異なりますが、ある細胞などは全体の70%が水のものもあります。
水の中にタンパク質、核酸、糖質などが浮かんでいて、それらを細胞膜という皮膜で取囲んだものが細胞なのです。
このような細胞が20兆以上も集まって、ひとつの体を構成し、さらにその表面を皮膚(これも細胞の固まり)がカバーとして覆っているのです。

これは人間に限ったことではなく、生物体は一見固体のように見えますが、ほとんどが「液体」「水」なのです。人間の体の部分でいえば、血液の90%は水というのはわかるとしても、人の脳も80%は水。
ものを見るための網膜も92%は水で、人は水に写してものを見ていることになります。

そう考えるといかに人間にとって、生物にとって、水が大事なものであるかわかっていただけるでしょう。


体の活動を維持するために、人は絶えず水を摂取し、排泄し、循環させる必要があります。
水の循環がスムーズにいっている間は生命活動が保たれ、生きていられますが、この循環がとどこおると生命活動はストップしてしまいます。

人間の体内からの水分排泄量は、静かに横たわっている成人男子で、1日2,300ミリリットルです。
もちろん体を動かした時や暑いと時などはそれ以上の水分が排出されます。
排出される水分の内訳はおよそ次のようです。

尿:1,200ミリリットル
糞尿:200ミリリットル
不感蒸泄:900ミリリットル

不感蒸泄とは呼気に含まれる水蒸気として体外にはき出されたり、皮膚表面から感知できない程度に分泌される汗のことです。
(運動した時や暑い時にかく汗とは別の汗腺から分泌されています。)

これだけの量が毎日排泄されているので、これに等しい分だけの水分の補給が必要となります。
ちなみに1日に最低でも500ミリリットルのおしっこが出ないと、不要な物質が体内にたまり、生命にとって危険な状態になります。

排泄された水分はただちに補う必要があります。
水分は食物にも含まれていますから、1日に補給すべき必要最低限の水分量は次のようになります。

飲料水:1,200ミリリットル
食物:800ミリリットル
代謝物:300ミリリットル

代謝物とは体内でタンパク質や炭水化物、脂肪などが酵素によって分解される時に排出される水分をいいます。

水分が不足すると、まず血液がどろっと粘りのある状態になります。
こうした時に脳梗塞、心筋梗塞といった血管が詰まる病気が起こりやすいのです。

水を飲むことは健康を保つ上で非常に大切なのです。
が老化するということは、水分が減っていくことでもあります。
新生児で80%、成人で60%もあった体の水分が、老人になると50%以下になることもあります。
老化とは乾燥することであるとも言えます。

水には基本的な新陳代謝の働きがあります。
年をとるとともに体の水分が少なくなるのは、この新陳代謝がおとろえるため、体内でつくられる水の量が減っていくためです。

細胞内の水には、カリウムイオンという微量成分が含まれており、老化に伴い細胞内の水が減ると、このカリウムが失われて、細胞の生命力がなくなっていきます。
カリウムの減少は老化の確実な指標と言われるほどです。
ですからカリウムを含んだ水をきちんと飲んでいる人は年齢にくらべて老化が遅いということになります。

また逆にナトリウムが増えるのも老化のしるしです。
ナトリウムは水分が少なくなると細胞内に入り始め、神経痛や筋肉の老化などの異常を引き起こします。

このように老化は水とおおいに関係があり、老化を防ぐには体に良い水をきちんとした取り方で取っていかなければなりません。
赤ん坊や子供のスベスベしたみずみずしい肌は、年齢とともに失われてしまいます。
皮膚は乾いてカサカサ、吹き出物やシミ、小じわなども増えてきます。
例えば小じわは、細胞内の水分が減って皮下組織が縮んでしまうことなどが原因です。
吹き出物なども、水分の新陳代謝が上手くいっていない証拠です。
美容にも明らかに水が関っているのです。

何よりも血液が乱れてくることが美容のもっとも基本的な敵です。
皮膚の素材をつくっている要は赤血球であり、つまりきれいな血液こそが美しい肌をつくるのです。
血液の90%は水ですから、血液のもとである水を良いものにとりかえなくてはなりません。

水がわりにジュースやコーヒーなどの飲料を飲んでいる人も多いですが、それでは糖分のとりすぎで肌をいためてしまう結果になってしまいます。
また、こうした飲料水は大量に飲めないのが普通ですから、どうしても水分補給自体が少なくなります。
そのため便秘がちになり、尿が少なくなったりして、体に毒素がたまり肌をダメにしてしまします。
さらに水道水にまじる塩素や、化学物質、清涼飲料水の食品添加物などが血液を汚し、肌をいためる原因になっていることもあります。

また最近では、アルコール・ベースの商品が多かった化粧水も、ウォーター・ベースのものが増えてきました。
揮発性が高く肌の水分を奪う性質のあるアルコールよりも、刺激の少ない水の方が、美顔にふさわしいと考えられるようになったからです。
そもそも水道とは水の乏しい地域に遠隔地から水を引き、安定した供給をするためのものです。
そのため安全でおいしい水の自然環境に恵まれていた日本では、水道化が本格的に進んだのは戦後かなりたってからのことでした。

高度経済成長の頃、住宅地が都心部から近郊へと広がり始めると、水源地や近くにも住宅や工場が増え、排水が水源に流れ込むようになります。
そこでより高度な浄水処理を施して対処するとともに、より遠くのきれいな水源を求めるようになりました。
しかし農薬汚染、ハイテク工場からの廃液、産業廃棄物にまぎれ込んだ有害物質などにより、そこにまで水質汚染は進み、もっと遠くから水を引き、より一層高度な浄水処理が必要となったのでした。

現在の浄水処理の方法は、まずプールなどで水をためて、砂などの不純物を沈殿させます。
その後、濾過処理して、より細かい不純物を取り除き、塩素を入れて雑菌などを死滅させるという処理を施しています。

日本では水道法で残留塩素の一定値が定められています。(水道水1リットル中0.1ミリグラム以上の含有量)
塩素が残っている水では細菌が完全に死滅しているからです。

しかし、この塩素が水道の味を損ねる原因になっています。
水道の水は特有のカルキ臭がしますが、これは塩素自体の臭いではなく、塩素が細菌と反応することによってカルキ臭が発生してしまうのです。
細菌が多ければ多いほど多量の塩素を必要とし、カルキ臭も強くなります。
つまり水道のカルキ臭が強い地域は、それだけ水源の汚染がひどいとも言えます。

しかも近年塩素はさらに大きな問題を引き起こすことが指摘されています。
水の中の有機物と塩素が化学反応を起こすと、トリハロメタンという物質をつくりだします。
このトリハロメタンは大量に摂取すると、中枢機能低下、肝臓障害、腎臓障害などを起こし、さらには催奇形性、発ガン性までもがあり、痴呆、イライラ、疲労、無気力の原因にもなると言われています。

それでも水道水の中に細菌がいる以上、塩素は入れないわけにはいきません。
その量を減らすには、まず水源をきれいにして細菌の量を減らすしかないのです。
環境庁は全国の水環境や水資源を改めて見直して、水環境の保全を訴えるために「名水百選」を選定し、昭和60年から実施しています。

その背景として、昭和40年代から60年代にかけての日本は、いわゆる高度経済成長の真っ最中にあり、都市化が進み、ビル・マンションが建ち、郊外にはゴルフ場が乱立しました。
ビル・マンション、地下鉄などのコンクリート化で地下水のあるエリアが激減し、地下水汲み上げによる地盤沈下などが大きな社会問題にもなりました。
またゴルフ場の農薬汚染、工場などからの廃液汚染による環境汚染、地下水の科学物質汚染など日本の経済成長に合わせて、水環境は厳しくなるばかりでした。

そのような状況の中で名水百選は水環境を改めて問い直した意義のあるものです。

この働きに触発されて、国土交通省も「水の郷 100選」という水源を選定、また各地方自治体も地元の優れた水源を活用しようという動きが出てきました。
美味しく、人間の身体に不可欠な良質の水を求める動きは、大きく始動しています。